アーセナルの変移


今季も残り2試合。
もうこれは完全な消火試合なので、あまり語ることも無いかと。


そういうわけなので、今季の総評に入ります。
過去2シーズンと比べてチームがどれだけ変わったかってのを見ていきます。


・07-08


GK:アルムニア
DF:サニャ、トゥレ、ギャラスクリシー
MF:フレブ、セスク、フラミニロシツキー
FW:ファン・ペルシー、アデバヨール


ファン・ペルシーが故障がちだったので、実際はフレブがトップ下でエブエが右サイドに入った回数の方が多いのかも。ロシツキーもシーズン途中で怪我してから1年以上欠場となったりと、誰かが怪我で抜けているって状況が続いたのでこのメンバーで戦えた試合ってのは実はほとんど無い。




・08-09


GK:アルムニア
DF:サニャ、トゥレ、ギャラスクリシー
MF:ウォルコットアルシャヴィン)、セスク、デニウソン(ソング)、ナスリ
FW:ファン・ペルシー、アデバヨール


前年と変わったのは中盤だけなんだけど、中盤の構成が変わるだけでこうも印象が変わるのかと言うほど戦力ダウンした感があった。このシーズン、例年よりも調子が良かったのは、イングランド代表入りを目指していたアルムニアと、怪我が例年より少なかったファン・ペルシーぐらいでは。CBはなかなか固定出来なかった。




・09-10


GK:アルムニア
DF:サニャ、ギャラスヴェルマーレンクリシー
MF:セスク、ソング、ディアビ
FW:ナスリ、ファン・ペルシー、アルシャヴィン


おそらくはこれがベストメンバーだったんだろうけど、実際はナスリがシーズン序盤不在だったり、ファン・ペルシーが中盤戦以降不在だったりと、ベストメンバーが分からない状況が1年間続いた。ベンゲルファン・ペルシーを1トップにしたかったと強調しているが、実際は中盤の枚数を増やしたかったのと、アルシャヴィンウォルコットを高い位置で使いたかったってのがメインの理由かと。怪我がちなファン・ペルシーが抜けただけで崩壊するほど脆いプランだったけど。




こうして見ると、07-08→08-09では中盤以外はほとんど変わってないんだけど、当時のアーセナルの生命線とも言えた中盤の構成力が著しく低下してしまい、その影響が攻守両面に及んだ。フレブ、フラミニだけでなくジウベルトも退団していたわけで、それまでカップ戦要員だったデニウソンをいきなりレギュラーに据えたのはやはり無理があったか。


09-10ではメインのフォーメーションを従来の4-4-2から4-3-3に変更した。アーセナルと言えば4-4-2、という考えが根強いファンも少なくないが、これだけ選手構成が変わってくれば適正なフォーメーションもそれに合わせて見出していくべきなので、フォーメーション変更自体は間違いだとは思わない。


どの年にも共通しているのは、アーセナルの中心には常にセスクがいる。09-10でフォーメーション変更したのは、1つはセスクとファン・ペルシーをチームの中心として考えた場合、セスクとファン・ペルシーの位置関係を近づけたかったというのがあるかもしれない。今季のセスクは3センターで例年よりも高い位置を取ることが多かった。低い位置まで下がって攻撃の組み立てもしてたが、基本的な組み立てはソングとかである程度出来ていた。


今季のアーセナルが格下相手には強く、同格以上の強豪相手には弱かった理由は何故か。今季のアーセナルは縦に早くなったんだけど、その分だけ中盤でじっくりゲームを組み立てることをしなくなった。というよりも出来ないってのが正解かもしれない。これは08-09シーズンからの問題なんだけど。縦に早くなった分、リーグ下位の相手なら守備の綻びも多いのでこじ開けやすいんだけど、上位相手だと同じやり方は通用しない。攻め急ぎからのカウンターで失点、という場面が目についたのはそういった中盤から前線への繋ぎ方、組み立て方の変化にあるのではないか。


中盤の構成の変化ってことで、ここ3シーズン中盤の底を務めた選手を比較すると、07-08はフラミニ、08-09はデニウソン、09-10はソングがメインだった。いつまでもフラミニが美化され続けてるけど、個人的にソングはすでに当時のフラミニを超えている。ただ、チーム全体のバランスを重視すると当時のフラミニに軍配が上がるかと。ただし、今フラミニが復帰したとしても優先順位ではソングが上回ると予想。当時とは周りのメンバーも変わってますし。フラミニは、とにかく細かく動き回ってよくボールを受けていたし、そこからシンプルに捌いていた。デニウソンが悪かったのは、フラミニに比べると明らかにボールの受け方が悪く、ボールを捌くのも遅かった(しかも横パス…)。ソングはこの2人に比べるとフィジカルが強く、ドリブルでのボール運びも出来る。パスも隙あらば前線の選手にスルーパスを狙っているのが特徴。ただし、前線に持ち込む割には自分でシュートを打つという選択肢が無いのが大きな欠点。前に運んだけどスペースが無いからサイドに展開ってパターンだと、どうしてもアーセナルが苦手なクロス放り込みに落ち着きやすくなる。ソングはフラミニよりも上手くなったんだけど、プレーはもっとシンプルにした方がチームにとってはより効果的になることもある。


あとは07-08に関して言うと、フラミニと同じぐらいフレブが重要な存在となっていた。中盤の色んな位置でボールを貰いに来てたが、彼のところでボールが収まるのでアーセナルはほとんどのゲームで中盤の主導権を握ることを可能にしていた。ナスリとかもボールは収まるんだけど、ボールを多く貰う為のポジショニングとか、その後の展開ってところではまだまだフレブとは雲泥の差がある。アルシャヴィンはシンプルに捌くか自分で仕掛けるかなので、タイプ的に違うし。あとフレブは、セスクとのコンビネーションが抜群だった。06-07と07-08はプレミアリーグの中じゃパス交換の回数はトップだったような。現在、セスクとこのレベルと同等の連携を築きあげてる選手がいないってのも中盤の構成力低下の要因と言える。それと、07-08に関してはフレブに限らず、選手間の距離が短く、全員が連動することによって細かいパス交換を可能にしていた。選手間の距離を短く保っているので、相手ボールになってもすぐ数人でチェックにいけた。このへんが08-09の最も悪かったところでもあるし、現在も十分に意思統一がなされていないので苦しんでいるところ。ソングがカードを多く貰っていたのは、ポジション上の都合でもあるが、ソングがファウルで止めざるを得ない状況をそれだけ多く作り出していたのが最たる要因。


で、極めつけがアデバヨール放出による前線の質の低下。今季序盤はファン・ペルシーが1トップで頑張ってたので彼のところでボールが収まっていたけど、長期離脱後は明らかにCFがアーセナルの求めるレベルに無かった。ファン・ペルシーやアデバヨールアーセナルの攻撃の組み立てにも参加出来るぐらいの技術があったけど、その後のFWってのはイマイチ組み立てに絡むほどの技術が無い。攻撃の組み立てにおいては中盤がいくら凄くても前線にボールが収まる選手がいなかった場合、最終的には攻撃が成り立たない。そのへんは06-07でFWがバチスタとアリアディエールしかいなかった状況を思い出すと分かり易いかと。




続きは夜書きます。すでにほとんど書いてしまったけど。